最近のスマホは高額になっているため、端末代を24回などの分割で支払っている人が多くなっています。「実質○円」「一定期間後に端末を返却すれば残りの支払いが不要」といった宣伝を見たことがある人も多いでしょう。
どのような宣伝であっても、端末代を分割で支払っているのであれば、それは携帯会社とのローン契約(割賦契約)です。そのため、債務整理の対象になります。
では、債務整理をすると、分割払い中のスマホはどうなるのでしょうか。
この記事では、任意整理・個人再生・自己破産のそれぞれで、スマホがどうなるのか、強制解約を避けるポイント、債務整理後にスマホを持つ方法を解説します。
- 端末代の分割払いは借金だが、毎月の通信料金は借金ではない
- 任意整理なら、スマホの契約を対象から外せば、そのまま使い続けられる
- 個人再生・自己破産では、端末代の分割払いが残っていると、強制解約のリスクがある
- 手続き直前に、端末代を一括で返済するのは危険(偏頗弁済)
債務整理後もスマホを使い続けられる条件
スマホを使い続けられるかどうかは、次の2点で決まります。
- 端末代の分割払いが残っているか
- 通信料金の滞納がないか
| 端末代の分割払い | 通信料金の滞納 | 手続き | スマホの利用 |
|---|---|---|---|
| なし(完済済み) | なし | いずれの手続きでも | 原則、そのまま使い続けられる |
| あり | なし | 任意整理(スマホを対象から外す) | そのまま使い続けられる |
| あり | なし | 個人再生・自己破産 | 強制解約される可能性がある |
| あり・なし | あり | いずれの手続きでも | 強制解約される可能性が高い |
通信料金は、借金ではありません
スマホの毎月の通信料金(通話料・データ通信料など)は、借金ではなく、電気・ガスのようなサービスの利用料です。そのため、債務整理をして信用情報機関に登録されても、通信料金を滞納していなければ、利用を続けられます。
問題になるのは、端末代の分割払い(借金)と、滞納している通信料金(債務)です。多くの携帯会社では、端末代と通信料金をまとめて請求しているため、整理の対象にすると契約全体に影響が出ることがあります。
任意整理の場合:スマホの契約を対象から外せば問題なし
任意整理は、整理する債権者を自分で選べる手続きです。携帯会社を対象から外せば、これまでどおりスマホを使い続けられます。
- 対象から外した携帯会社には、受任通知は送られません
- 端末代の分割払いと通信料金は、これまでどおり支払い続けます
- 支払いが滞ると、強制解約の対象になるので注意が必要です
一方、携帯会社を任意整理の対象に含めると、端末代の支払いを止めることになり、「ローンを支払えない=契約違反」として、強制解約される可能性があります。強制解約されると、その電話番号も使えなくなります。
任意整理の仕組みについては、任意整理とは?で詳しく解説しています。
個人再生・自己破産の場合:端末代の分割払いも対象になる
個人再生や自己破産は、原則としてすべての借金が対象になります。端末代の分割払いが残っていれば、スマホの残債だけを特別扱いすることはできません。
携帯会社に知られると、利用停止・契約解除の可能性がある
弁護士や司法書士に依頼すると、債権者に受任通知が送られます。携帯会社が債権者に含まれていると、受任通知によって債務整理の事実が伝わり、契約の約款に従って、利用停止や契約解除になる可能性があります。
ただし、携帯会社や契約内容によって対応は異なります。端末代の請求と通信料金の請求を切り離して、通信契約だけ続けられるケースもあります。一概に使えなくなるとは言い切れません。
端末そのものは、引き上げられにくい
ローンの支払いが終わるまで、販売会社が商品の所有権を持つ「所有権留保」という契約があります。携帯端末の割賦契約には、通常、所有権留保の項目がないとされています。そのため、分割払いが残っていても、端末そのものを引き上げられるケースは少ないようです。
ただし、ローン会社を通して購入した場合など、契約内容によって異なることがあります。
個人再生・自己破産の仕組みについては、個人再生とは?、自己破産とは?で解説しています。
手続きの直前に端末代を一括で払うのは危険です
「スマホを使い続けたいから、手続きの前に端末代の残りを全部払ってしまおう」と考える人がいます。これは危険な行為です。
個人再生や自己破産の直前に、特定の債権者だけに返済すると、「偏頗弁済(へんぱべんさい)」に当たります。債権者を平等に扱うことが手続きの大前提なので、偏頗弁済をすると、手続きに支障が出たり、自己破産では免責が認められにくくなったりするおそれがあります。
延滞している通信料金を、手続き前にまとめて払う場合も同様です。端末代や通信料金を支払う前に、必ず弁護士や司法書士に相談してください。
通信料金を滞納していると、どうなる?
通信料金を滞納している状態で債務整理をすると、受任通知が届いた時点で、強制解約になる可能性が高くなります。滞納している料金は、債務整理の対象になる債務です。
滞納を続けると、強制解約になるだけでなく、延滞の情報が信用情報に影響する場合もあります。債務整理を考えている人は、通信料金だけは滞納しないようにしましょう。
強制解約を避けるためにできること
1. スマホの契約を対象から外せる任意整理を検討する
借金の状況によっては、任意整理でスマホの契約を対象から外すことが可能です。ほかの借金が任意整理で解決できる範囲であれば、スマホを守りやすくなります。
2. 端末代の残りと通信料金の状況を、最初に伝える
弁護士や司法書士に相談するときは、スマホの分割払いが残っているか、通信料金の滞納がないかを、最初に伝えましょう。手続きの選び方や、受任通知を送る範囲を、状況に合わせて検討してもらえます。
3. 電話番号を残したい場合は、事前に相談する
仕事で使う番号や、各種サービスの認証に使っている番号は、強制解約されると不便です。番号を残す方法がないか、手続きの前に相談しておきましょう。
4. 契約内容を確認する
携帯会社によって、端末代と通信料金の扱いは異なります。契約書や約款で、割賦契約の解除条件を確認しておくと、見通しが立てやすくなります。
依頼先の選び方については、債務整理は弁護士と司法書士どっちがいい?で解説しています。
債務整理後に、新しいスマホを持つ方法
債務整理をすると、信用情報機関に事故情報が登録されます。(詳しくは『金融業界のブラックリストってどういうもの?』をご覧ください。)
端末代の分割払いはローン契約なので、登録されている間は、分割払いでスマホを購入できません。登録期間の目安は、手続きや信用情報機関によって異なり、5〜10年程度です。
その間にスマホを持つ方法は、次のとおりです。
端末を一括で購入する
店頭やネットで、端末を一括払いで購入する方法です。高額な機種は負担が大きいため、型落ちの機種や、価格を抑えた機種を選ぶ人もいます。
SIMフリー端末や中古端末と、SIMのみの契約を組み合わせる
端末は一括で購入し、通信は「SIMのみ」の契約にする方法です。通信料金を滞納していなければ、契約できることが多いとされていますが、事業者によっては審査があります。
後払い・分割の決済サービスにも注意
後払いや分割の決済サービスも、審査があるため、通らない可能性があります。
ブラックリストの期間中にできないことについては、債務整理をしてブラックリストに載った人ができなくなることは?で解説しています。
よくある質問
端末は取り上げられますか?
携帯端末の割賦契約には、通常、所有権留保の項目がないため、端末そのものを引き上げられるケースは少ないとされています。ただし、契約内容によって異なります。
20万円を超える高額な端末は、自己破産で問題になりますか?
自己破産では、一定額を超える財産が処分の対象になることがあります。20万円を超える高額な端末は、対象になる可能性があります。ただし、実際には、中古としての価値で評価されることが多く、問題になるケースは多くありません。気になる場合は、弁護士や司法書士に確認してください。
端末購入プログラム(返却すると残債が免除される仕組み)を利用している場合は?
プログラムの内容は、携帯会社や契約によって異なります。債務整理の前に端末を返却すると、手続きに影響することがあるため、自己判断せず、弁護士や司法書士に相談してください。
債務整理をしたことで、家族名義の契約を借りて使ってもよいですか?
契約者と利用者が異なる場合、規約で制限されることがあります。また、名義を借りた家族の信用にも影響するおそれがあります。避けたほうが無難です。
債務整理後に、機種変更や乗り換えはできますか?
一括払いであれば、機種変更も乗り換えもできます。ただし、分割払いは利用できません。乗り換えの際に、端末代の残りがあると、一括請求になる場合があるため、事前に確認しましょう。
債務整理をすると、携帯電話の契約自体ができなくなりますか?
通信サービスの契約(SIMのみ)は、借金ではないため、債務整理をしていても契約できることが多いとされています。ただし、通信料金の滞納履歴があると、契約できない場合があります。
まとめ
債務整理をしたときのスマホは、次のとおりです。
- 端末代の分割払いは借金、毎月の通信料金は借金ではない
- 任意整理:スマホの契約を対象から外せば、これまでどおり使える
- 個人再生・自己破産:端末代の分割払いが残っていると、強制解約される可能性がある
- 手続き直前の一括返済は、偏頗弁済になるおそれがあるため危険
- 債務整理後は、一括購入やSIMフリー端末で、スマホを持つ
スマホは、生活や仕事に欠かせないものです。契約の状況によって対応が変わるため、債務整理を依頼する際は、まずスマホの状況を最初に伝えましょう。
