一般的に「多重債務」とは、複数の借入があり、返済が困難になっている状態のことです。借金を返すために、別の借金をするようになった状態は、「自転車操業」とも呼ばれます。
クレジットカードのキャッシングやカードローンを複数利用していると、毎月返済しているのに、借金の残高が減らなくなることがあります。
そんな状態になってしまった人が、多重債務を解決する方法を紹介します。
- 借金を返すために借金をしているなら、多重債務の状態のサイン
- 自力で抜け出せない場合は、債務整理(任意整理・特定調停・個人再生・自己破産)を検討する
- 弁護士や司法書士に依頼すると、原則として取立てが止まる
- 無料で相談できる窓口もある
多重債務・自転車操業のサイン
次のような状態に当てはまる場合は、多重債務に陥っている、またはその一歩手前の可能性があります。あくまで目安ですが、当てはまる数が多いほど、早めの対策が必要です。
- 借金の返済のために、別の会社から借りている
- 借入先が複数あり、返済日がバラバラで管理できていない
- 毎月の返済額のうち、利息が大きな割合を占めている
- 返済しているのに、借金の残高がなかなか減らない
- 毎月の返済額が、手取り収入の大きな割合を占めている
- 生活費が足りず、給料日前にカードのキャッシングを使っている
- 家族や友人に借りてまで、返済している
なぜ、借金は返しても減らないのか
カードローンやキャッシングのリボ払いは、毎月の返済額を少額に設定できるため、使いやすいことが魅力です。
しかし、返済額が少ないと、完済までの期間が延びるだけでなく、利息をたくさん払わなければなりません。
具体例:50万円を、年15%で借りた場合
たとえば、残高50万円、年利15%で、毎月1万円ずつ返済する場合を考えてみましょう。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 毎月の利息 | 約6,250円 |
| 毎月の返済額 | 1万円 |
| 元金に回る金額 | 約3,750円 |
返済額の6割以上が利息に消えてしまいます。この返済を続けた場合、完済まで約6年半以上かかり、利息だけで約29万円(概算)を払うことになります。しかも、追加で借りてしまえば、さらに返済は長引きます。
「返しても返しても、残高が減らない」という状態になりやすいのは、このためです。
リボ払いについては、リボ払いを任意整理して減額する方法で詳しく解説しています。
自分でできる対策と、その限界
借金をするきっかけは、生活費の足しや、商品の分割払いであることが多いものです。そこから抜け出すために、自分でできる対策は、次の2つです。
- 収入を増やす(転職・副業をする)
- 支出を減らす(交際費・通信費・保険料などを見直す)
まず取り組みやすいのは、支出を減らすことです。次に、転職や副業で収入を増やすことが考えられます。
しかし、借金の額が大きくなってしまうと、いくら見直しても限界があります。支出を減らしても、利息の負担が重く、元金が減らない場合は、借金そのものを減らす方法を考える必要があります。
複数の借金をまとめる「おまとめローン」という方法
おまとめローンとは、複数の借金をひとつにまとめて、返済を1社にするローン商品です。
返済日が1つになって管理しやすくなり、金利が下がれば、利息の負担が軽くなる場合もあります。
ただし、次の点に注意が必要です。
- 支払い期間が延びて、支払い総額が増える可能性がある
- 返済が滞っている場合や、収入・勤務先の状況によっては、審査に通らない
- 返済が苦しい状態では、さらに借金が増えるリスクがある
詳しくは、おまとめローンの審査に落ちたらをご覧ください。
多重債務を解決する「債務整理」4つの方法
自力で抜け出せない場合は、債務整理が有効です。債務整理には、次の4つの方法があります。
| 方法 | 内容 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 任意整理 | 弁護士・司法書士が、債権者と交渉して、返済方法を見直す | 利息や遅延損害金をカットして、原則3年(長くても5年)で完済を目指す。元金は原則として減らない |
| 特定調停 | 簡易裁判所で、調停委員が間に入り、返済方法を見直す | 費用が数千円程度で済み、専門家に頼まず自分でも手続きできる。債権者が合意しないと成立しない |
| 個人再生 | 裁判所に申し立てて、借金を大幅に減らし、原則3年で分割返済する | 借金の額などの条件に応じて、元金を大幅に減額できる。住宅ローンがある場合でも、条件を満たせば、マイホームを残せる |
| 自己破産 | 裁判所に申し立てて、借金の支払い義務を免除してもらう | 原則としてすべての借金がゼロになる。一定の財産は処分される |
1. 任意整理
任意整理は、裁判所を通さずに、弁護士や司法書士が債権者と交渉する手続きです。毎月一定の金額を返済しながら、3年(長くても5年)で完済を目指します。
借金の元金は原則として減りませんが、利息や遅延損害金をカットするため、支払い総額は大幅に減る可能性があります。
詳しくは、任意整理とは?をご覧ください。
2. 特定調停
特定調停は、簡易裁判所に申し立てて、調停委員が債権者との間に入り、返済方法を決め直す手続きです。弁護士や司法書士に依頼しなくても、自分で手続きできるため、費用が安く済みます。
ただし、債権者が合意しなければ成立しません。また、決まった返済計画には強制力があり、返済が滞ると、財産の差押えなどの強制執行を受けるおそれがあります。
3. 個人再生
任意整理では解決できないような、大きな借金がある場合は、個人再生を検討します。
任意整理は、利息をカットできても、元金そのものは原則として減りません。個人再生は、借金の元金そのものを、条件に応じて大幅に減らせます。
一定の条件を満たせば、住宅ローンの残っているマイホームを処分せずに、生活を再建できます。
詳しくは、個人再生とは?をご覧ください。
4. 自己破産
任意整理や個人再生では解決できない大きな借金がある場合や、無職で収入がない場合は、自己破産を検討します。
借金を全てゼロにする、最後の手段です。一定の財産は処分しますが、それでも返済できない借金を、裁判所に免除してもらいます。
詳しくは、自己破産とは?をご覧ください。
どの手続きが向いている?
どの方法がよいかは、借金の額、収入、財産、住宅ローンの有無などによって異なります。あくまで目安として、次の表を参考にしてください。
| 状況 | 向いている手続き |
|---|---|
| 収入があり、利息をカットすれば3〜5年で完済できる見込みがある | 任意整理 |
| 借金が少なめで、費用を抑えたい。自分で手続きを進められる | 特定調停 |
| 借金が大きく、利息のカットだけでは返済が難しい。収入はある | 個人再生 |
| 住宅ローンが残っているマイホームを残したい | 個人再生(住宅ローン特則) |
| 返済の見込みが立たない、または収入がない | 自己破産 |
自分の状況でどの手続きが向いているかは、弁護士や司法書士に相談すれば、判断してもらえます。収入がない場合の任意整理については、無収入で借金を返せなくなった人が任意整理を行う方法は?で解説しています。
弁護士・司法書士に依頼した後の流れ
弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、債権者に「受任通知」が送られます。この受任通知には、請求を止める効果があり、原則として、電話などの直接の取立てが止まります。
返済日が近くて、支払いが滞りそうなときは、すぐに相談しましょう。
相談のときに聞かれること
法律事務所に相談すると、債権者の名前と、借金の総額を聞かれます。
借入先や金額が分からなくても、あとで取引履歴を取り寄せて、正確な金額を確認するので、大丈夫です。ただし、おおよその金額は把握しておくと、相談がスムーズになります。借入先が分からない場合の調べ方は、借入先が分からなくなった時の調べ方をご覧ください。
無料で相談できる窓口
「いきなり弁護士に相談するのは、ハードルが高い」という人は、次のような公的な窓口や、専門家の団体の相談窓口を利用できます。
- 法テラス(日本司法支援センター):収入などの条件を満たせば、無料の法律相談や、弁護士費用の立替制度が利用できる
- 弁護士会・司法書士会の相談窓口:地域の弁護士会や司法書士会が、債務整理の相談を受け付けている
- 財務局の多重債務相談窓口:国の機関として、専門の相談員が相談に応じ、必要に応じて弁護士などにつなげてくれる
- お住まいの自治体の相談窓口・消費生活センター
- 日本クレジットカウンセリング協会:電話での無料相談などを実施している
窓口の名称や受付日時は、地域によって異なります。お住まいの地域の最新の情報を確認してください。
費用が不安な場合は、お金がなくて債務整理の弁護士費用を払えない時の対処法も参考になります。依頼先の選び方は、債務整理は弁護士と司法書士どっちがいい?で解説しています。
多重債務のときに、注意したいこと
ヤミ金や、「借金を救済する」という勧誘に注意
返済に困っているときに、「誰でも借りられる」「ブラックでも融資」といった広告や、SNSのメッセージを見かけても、決して手を出さないでください。貸金業の登録がない違法なヤミ金である可能性があります。
また、弁護士や司法書士の資格がないのに、「借金を減らします」と言う業者にも注意が必要です。
新たな借入は、状況を悪化させます
返済のために新たな借入をすると、借金がさらに膨らみます。借入を繰り返してしまう人は、日本貸金業協会の貸付自粛制度(自分から申し出て、貸金業者からの新たな借入を制限してもらう制度)の利用も一つの方法です。
よくある質問
借入先が何社から、多重債務といえるのですか?
借入先の数に、はっきりした基準はありません。「借金を返すために借金をしている」「返済が困難になっている」状態であれば、1社であっても、多重債務に近い状態と考えられます。
債務整理をすると、家族にバレますか?
弁護士や司法書士には守秘義務があるため、依頼したことを家族に知らせることはありません。ただし、郵便物などから知られる可能性はあります。詳しくは、任意整理は家族に内緒でできる?をご覧ください。
債務整理をすると、財産を失いますか?
財産を処分する可能性があるのは、自己破産の場合です。任意整理や特定調停、個人再生では、原則として財産を処分する必要はありません。
おまとめローンと債務整理は、どちらがよいですか?
返済が遅れていなくて、金利が下がるなど、負担が軽くなる見込みがあれば、おまとめローンも選択肢です。ただし、すでに返済が苦しい状態だと、審査に通らなかったり、支払い総額が増えたりする可能性があります。その場合は、債務整理を検討しましょう。
債務整理をすると、ブラックリストに載りますか?
信用情報機関に事故情報が登録され、一定期間、新たなクレジットカードやローンの利用が難しくなります。詳しくは、金融業界のブラックリストってどういうもの?をご覧ください。
まとめ
多重債務や自転車操業から抜け出すための方法は、次のとおりです。
- 借金を返すために借金をしているなら、早めに対策する
- 支出の見直しや収入アップで解決できない場合は、債務整理を検討する
- 債務整理には、任意整理・特定調停・個人再生・自己破産の4つがある
- 弁護士や司法書士に依頼すると、原則として取立てが止まる
- 公的な窓口など、無料で相談できる窓口もある
多重債務は、1人で抱え込んでも、状況は変わりません。返済日が近づく前に、まずは相談してみましょう。
