偏頗弁済(へんぱべんさい)とは、『自己破産の直前に、特定の債権者だけに返済すること』です。自己破産の直前に偏頗弁済すると免責不許可になるという話しは有名ですよね。
お世話になっている親戚だから破産する前にお金を返したい
勤め先に破産したことがバレないように、勤め先からの借入だけは返済したい
どちらもよくあるケースですが、免責不許可になって自己破産できなくなる可能性があるので要注意です。
自己破産では全ての債権者が平等に扱われるため、原則として偏頗弁済は禁止されています。「わたしは自己破産することにしました」と債権者に通知して返済をやめたあと、一部の債権者だけに返済するのは不公平ですよね。
例外として生活費だけは払っても問題ありません。家賃や電気代を払わなければ生活できませんから、その月の家賃を払うのは大丈夫です。滞納している家賃を払うと偏頗弁済を疑われるので要注意です。
偏頗弁済すると免責不許可のリスクが高くなるだけでなく、予納金(裁判費用)が高額になるというデメリットもあります。「どこまでが偏頗弁済になるかどうか」は判断が難しいので、必ず自己破産に強い弁護士に相談してください。
この記事の目次
「偏頗弁済する=免責不許可になる」は誤解です
偏頗弁済をしたらただちに免責不許可になるわけではありません。
裁判所は「この人は偏頗弁済があるのでは?」と疑うと、返済行為を否認できる破産管財人を選定します。選ばれた破産管財人は偏頗弁済と認められた返済行為を否認します。
偏頗弁済が悪質だったり、破産者が不誠実だった場合に限って免責不許可となります。
勤め先に自己破産したことがバレたくないので、勤め先から借りている50万円を偏頗弁済した。その後、破産申し立てをして管財事件となった。
⇒破産管財人が「その50万円は債権者全員のものです。返してください。」といって会社から50万円を取り返します。
偏頗弁済をして免責不許可になるのはどんな時?
偏頗弁済が悪質だと判断されて免責不許可になりやすいケースは次の2つです。
・返済する義務がないのに返済した
・他の債権者の利益を減らそうとする意図があった
「自己破産で財産がなくなってしまう。でも、親戚だけにはお金を返しておこう」と思って返済するのが危険です。返済する相手が家族や同僚だと疑われやすくなります。
「偏頗弁済を知らなくて滞納していた家賃1ヶ月分を払ってしまった。うっかりしてました。」なら、そこまで心配はいりません。
偏頗弁済すると予納金が高額になる
偏頗弁済のデメリットは、破産管財人が選定されて裁判費用が高額になることです。
破産管財人が選定されれば、同時廃止事件ではなく管財事件に振り分けられます。管財事件になれば予納金(裁判費用)が20万円以上高くなってしまいます。
この点でも偏頗弁済を疑われる行為は避けるべきです。何が偏頗弁済になるかは判断が難しいので、依頼した弁護士さんに細かく聞きましょう。
生活費を払うのは偏頗弁済にならない
家賃や携帯料金、電気水道代は大丈夫です。生きていくために必要なものを払うことは制限されません。
ただし、滞納している家賃や携帯代は問題があります。滞納している家賃を勝手に払うと偏頗弁済になる可能性があります。
※滞納している公共料金なら大丈夫なケースが大半です。判断基準は「払わなければ生きていけなくなるかどうか」です。
これって偏頗弁済になるの?Q&A
- 税金の支払いは偏頗弁済になる?
- なりません。
滞納している税金を一括で払っても偏頗弁済になりませんし、新しく請求された税金を支払うのも偏頗弁済になりません。 - 家賃は偏頗弁済になる?
- 家賃を払わなければ生活できないので偏頗弁済にはなりません。しかし、滞納している家賃を支払うのは偏頗弁済になる可能性があります。それほど滞納期間が長くなければ大丈夫な場合もありますから、弁護士に相談してください。
- 携帯代は偏頗弁済になる?
- 毎月の携帯代を支払うのは問題ありません。
しかし、滞納している料金を払うと偏頗弁済になる可能性があります。また、分割払いにしている携帯本体の代金を支払うと偏頗弁済になる可能性があります。
ゲームアプリなどに課金していたり、ショッピングサイトでの買い物代金をスマホと一緒にしていた場合、優先的に支払うと偏頗弁済になります。
- 養育費は偏頗弁済になる?
- 毎月の養育費の支払いは偏頗弁済になりません。ただし、将来の養育費を一括で支払うのは問題があります。
偏頗弁済の約束は脱法の可能性があるので要注意
「自己破産の手続きがおわったあと、借りたお金は返します」と偏頗弁済の約束をするのは要注意です。原則として偏頗弁済は禁止されていますが
- 偏頗弁済はなぜいけないのか
- 偏頗弁済はどこまでいけないのか
この2点をしっかり理解している人はほとんどいません。
よくあるのが奨学金の自己破産です。自己破産すると奨学金の保証人になっている人(両親や親せき)へ請求がいってしまうので、「ごめんなさい、自己破産するのであなたに請求がいきます。でも破産したあとにお金を払います。」と約束するケースがあります。
任意にお金を払うことが免責不許可になるわけではありませんが、素人の伝言ゲームで誤解を生むリスクがさらに高くなります。
軽い口約束で免責不許可になったら目も当てられません。事前に弁護士に相談して「○○さんに対して偏頗弁済の約束をしたいのですが」と確認してください。
まとめ
- 原則として偏頗弁済は禁止されている
- 「偏頗弁済したら免責不許可になる」わけではない
- 偏頗弁済しても、破産管財人によって返済行為が否認される
- 悪質な場合は免責不許可になる
- 生活費は例外、家賃や電気水道・携帯代金を払うのは大丈夫
- 偏頗弁済の約束も脱法の可能性があるので要注意
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