債務整理をすると、個人再生や自己破産をした人の氏名や住所が「官報」に掲載されます。誰でも閲覧できる公的な機関誌に自分の情報が載ると聞くと、家族や会社にバレるのではないかと不安になる人は多いはずです。
結論から言うと、官報に載るのは個人再生と自己破産をした場合だけです。任意整理であれば、官報に掲載されることはありません。
この記事では、官報に個人情報が載る仕組みと、任意整理なら掲載されない理由、実際に官報を見ているのはどんな人なのかを解説します。
官報とは?個人再生・自己破産をすると掲載される公的な機関誌
官報とは、独立行政法人国立印刷局が発行している、法令や公的な決定事項を国民に知らせるための機関誌です。
利用料金を支払えば誰でも閲覧でき、インターネット版の「インターネット版官報」でも一部の情報を確認できます。
個人再生や自己破産をすると、手続きの過程で氏名や住所などの個人情報が官報に掲載されます。これは、債務整理の中でも特に心理的な抵抗を感じる人が多いポイントです。
個人再生・自己破産で官報に個人情報が載る理由
個人再生や自己破産で官報への掲載が必要になるのは、「債権者平等の原則」という考え方があるためです。
債権者平等の原則とは、1人の債務者(あなた)に対して複数の債権者(銀行や貸金業者)がいる場合、すべての債権者が債権額に応じて平等に扱われなければならないという原則です。
個人再生や自己破産は、任意整理のように特定の債権者とだけ交渉する手続きではなく、裁判所を通じて債権者全員の権利を平等に調整する手続きです。
そのため、手続きの内容を国が運営する情報機関を通じて公に示す必要があり、官報への掲載が義務づけられています。
官報に載るタイミングと回数
官報への掲載は、手続きの節目ごとに行われます。回数や時期は手続きの種類によって異なります。
自己破産は2回掲載される
自己破産の場合、官報には基本的に2回掲載されます。
1回目は、裁判所が破産手続きの開始を決定したときです。2回目は、裁判所が免責を許可したときです。
この2回目の掲載から2週間の不服申立て期間を経て、債権者からの異議がなければ免責の効力が確定します。多数の利害関係人が関わる破産手続きでは、免責の効力が生じる日を全員に対して画一的に示す必要があるため、官報への掲載という形が取られています。
個人再生は2〜3回掲載される
個人再生の場合、開始決定・書面決議に付する決定(または意見聴取)・再生計画の認可決定のタイミングで、合計2〜3回程度官報に掲載されるのが一般的です。手続きの進み方によって回数は前後します。
掲載から確認できるまでには時間差がある
裁判所が決定を出してから、実際に官報に掲載されるまでには一定の期間がかかります。自分がいつ載るのか正確に知りたい場合は、担当の弁護士や司法書士に確認するのが確実です。
任意整理なら官報に載らないわけ
任意整理は、特定の債権者だけを対象に、裁判所を通さずに借金の減額や返済条件の交渉を行う手続きです。
そもそも債権者平等の原則が適用される手続きではなく、裁判所を介さない私的な交渉であるため、全国に公表する必要がありません。だからこそ、任意整理では官報への掲載が発生しないのです。
官報に載ることに強い抵抗がある場合、まず任意整理で対応できないかを検討する価値があります。任意整理の仕組みやメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
参考:任意整理とは?メリットやデメリット、自己破産や個人再生との違いについて
官報には載らないが、ブラックリストには載る
任意整理をしても官報には載りませんが、いわゆる「ブラックリスト」、つまり信用情報機関には事故情報として登録されます。
ブラックリストは官報のように全国に公表されるものではなく、加盟している金融機関だけが照会できる情報です。一般の人や勤務先が閲覧できる情報ではないため、官報への掲載とは性質がまったく異なります。
信用情報機関やブラックリストに載ることで何ができなくなるのかについては、以下の記事をご参照ください。
官報を見ているのはどんな人?一般人が見ることはほとんどない
官報を日常的にチェックしているのは、主に金融業者や信用情報機関の担当者です。一般の人が官報を定期的に見る習慣を持っていることは、ほとんどありません。
金融機関が官報をチェックする理由
個人再生や自己破産をする際、裁判所に提出する「債権者一覧表」にはすべての債権者を記載する義務があります。
金融機関は、自社の顧客が債務整理をしたかどうかを把握しておく必要があります。把握できていないと、回収できるはずの債権を回収できずに損失を被る可能性があるためです。そのため、金融機関は日常的に官報をチェックし、自社の顧客が掲載されていないかを確認しています。
近所の人や会社の同僚が偶然見つける可能性は低い
官報は法令や決定事項を扱う専門的な機関誌であり、一般紙のように広く読まれているものではありません。閲覧するには利用料金もかかるため、家族や会社の同僚、近所の人が偶然目にする可能性は極めて低いのが実情です。
ただし、官報の情報をもとにした違法な名簿業者の存在も指摘されています。心配な場合は、そうしたリスクも含めて弁護士や司法書士に相談し、対策を確認しておくと安心です。
官報に載りたくない場合は任意整理ができるか相談を
借金を整理したいけれど官報には載りたくない、という場合は、任意整理で対応できるかどうかをまず検討しましょう。
任意整理は、減額幅が個人再生や自己破産に比べて小さくなる分、官報への掲載がなく、手続きの負担も比較的軽いというメリットがあります。ただし、借金の総額や収入の状況によっては、任意整理では十分な減額ができず、個人再生や自己破産が適した選択肢になる場合もあります。
自分にとってどの手続きが向いているかは、借金の額や収入、資産状況によって異なります。無料相談を行っている弁護士事務所も多いので、まずは自分の状況で任意整理が可能かどうかを相談してみることをおすすめします。
官報についてよくある質問
Q. 官報はインターネットで誰でも無料で見られますか?
インターネット版官報では一部の情報を無料で閲覧できますが、直近の号に限られており、過去の号をさかのぼって見るには有料の会員登録が必要です。誰でも無条件ですべて無料で見られるわけではありません。
Q. 官報に載ったことが原因で会社に知られることはありますか?
官報を会社が日常的にチェックしているケースはまれで、官報の掲載だけを理由に会社に知られる可能性は高くありません。ただし、給与の差し押さえが行われる場合は、勤務先に裁判所から通知が届くため、その経路で知られる可能性はあります。
Q. 一度官報に載った情報は消せますか?
官報に一度掲載された情報を、後から削除することはできません。掲載自体を避けたい場合は、官報掲載のない任意整理を選べるかどうかを事前に検討することが重要です。
まとめ
官報に個人情報が載るのは、個人再生と自己破産をした場合です。自己破産では2回、個人再生では2〜3回程度、手続きの節目ごとに掲載されます。
一方、任意整理は裁判所を通さず特定の債権者とだけ交渉する手続きのため、官報には掲載されません。ただし、任意整理をしてもブラックリストへの登録は避けられない点には注意が必要です。
官報を実際にチェックしているのは主に金融機関で、一般の人が偶然目にする可能性は低いのが実情です。それでも官報への掲載にどうしても抵抗がある場合は、任意整理で対応できるかどうか、早めに弁護士や司法書士へ相談してみましょう。
