奨学金を借りて進学した人にとって、返済は社会人になってからも長く続く負担です。「奨学金が返せない」「他の借金もあって生活が苦しい」と悩む人は少なくありません。
この記事では、奨学金を債務整理するとどうなるのか、そして保証人にできるだけ迷惑をかけない方法を解説します。
- 奨学金も債務整理の対象にできるが、人的保証の場合は連帯保証人・保証人に請求が行く
- 日本学生支援機構(JASSO)は任意整理に応じにくいため、奨学金を外して他の借金だけを任意整理するのが一般的
- 債務整理の前に、減額返還・返還期限猶予などの救済制度を確認する
- 機関保証なら家族に請求は行かないが、債務そのものがなくなるわけではない
奨学金は債務整理できる?手続き別・保証別の早見表
奨学金も借金の一つなので、任意整理・個人再生・自己破産のいずれでも対象にできます。ただし、奨学金を対象に含めるかどうかとどの保証制度を利用しているかで、影響を受ける人が大きく変わります。
【奨学金を債務整理の対象に含めた場合の影響】
| 手続き | 本人 | 人的保証の場合 (連帯保証人・保証人) |
機関保証の場合 |
|---|---|---|---|
| 任意整理 | JASSOは減額交渉に応じにくく、一括請求になる可能性がある | 連帯保証人・保証人に請求が行く | 保証機関が代位弁済し、本人に一括請求される。家族への請求はない |
| 個人再生 | 奨学金だけを外すことはできない。他の借金と同じ割合で減額される | 減額された分を保証人が請求される | 家族への請求はない |
| 自己破産 | 免責が認められれば支払義務がなくなる | 免責された分を連帯保証人・保証人が請求される | 家族への請求はない |
一言でまとめると、『奨学金を債務整理の対象に含めると、人的保証の場合は家族に請求が行く』ということです。
債務整理の前に確認したい奨学金の救済制度
奨学金の返済が苦しいとき、最初に検討したいのが債務整理ではなく、JASSOの救済制度です。返済が難しい事情があれば、次のような制度を利用できる場合があります。
- 減額返還制度:毎月の返還額を半額または3分の1程度に減らし、その分返還期間を延ばす制度
- 返還期限猶予制度:低収入や病気などの事情がある場合に、返還を先延ばしにする制度(経済的な理由の場合は通算10年が上限)
これらは延滞する前に手続きしておくことが重要です。延滞してしまうと、延滞金が発生するだけでなく、連帯保証人や保証人にも督促が行きます。
救済制度の対象になる条件や手続き方法は、JASSOの公式サイトで確認してください。
ただし、奨学金以外にも借金があり、全体として返済が立ち行かない場合は、救済制度だけでは解決しないこともあります。その場合に債務整理を検討することになります。
奨学金を任意整理するとどうなる?
任意整理とは、債権者との話し合いで将来利息のカットや分割払いを取り決める手続きです。債務整理の中でもっともデメリットが少ない反面、債権者が交渉に応じる義務はありません。
JASSOは任意整理に応じにくい
代表的な奨学金実施団体であるJASSOは、任意整理の交渉に協力的とは言えません。将来利息のカットや返済期間の延長には、応じない姿勢が強いのが実情です。
また、無利子の第一種奨学金は、そもそもカットできる将来利息がありません。有利子の第二種奨学金でも、利率に上限があるため、任意整理による減額効果は大きくないことが多いです。
奨学金を任意整理の対象にすると保証人に請求が行く
奨学金を任意整理の対象にすると、連帯保証人や保証人に請求が行きます。
人的保証制度では、連帯保証人は原則として「父母」、保証人は原則として「おじ・おば・兄弟姉妹」などの親族です。そのため、家族に内緒で手続きを進めるのはまず無理です。
保証人が負う金額は、連帯保証人と保証人で異なります。
- 連帯保証人:本人が返還すべき残額の全額
- 保証人:連帯保証人が1名・保証人が1名の場合、本人が返還すべき残額の2分の1(分別の利益)
請求を受けた保証人が一括で支払えない場合は、保証人自身も債務整理が必要になるかもしれません。
保証人自身が債務整理する場合の注意点は「奨学金の保証人が債務整理するとどうなる?保証人になれない・保証人交代のリスクを解説」で詳しく解説しています。
奨学金以外の借金だけを任意整理する方法
奨学金の返済に悩んでいる人の多くは、奨学金以外にも借金を抱えています。奨学金の返済が苦しくて「借金を返すために借金をする」というパターンです。
この場合は、奨学金を対象から外し、消費者金融やクレジットカードなど奨学金以外の借金だけを任意整理することができます。
- 借金全体の返済負担が軽くなり、奨学金を返す余裕が生まれやすい
- 奨学金は任意整理の対象外なので、連帯保証人・保証人に連絡が行くことはない
- 家族に内緒で債務整理を進めたいなら、この方法がもっとも現実的
注意点:奨学金の延滞は別に放置できません。任意整理で奨学金を外しても、奨学金の返済は続きます。延滞が続けば、家族への督促や個人信用情報機関への登録につながります。奨学金は通常どおり返済するか、救済制度を利用してください。
個人再生・自己破産する場合も保証人が責任を負う
個人再生や自己破産をする場合、奨学金だけを手続きから外すことはできません。債権者をすべて公平に扱うことが原則だからです。
そして、本人の借金が減額・免除されても、その効力は保証人には及びません。ポイントは次の2点です。
- 個人再生で減額された奨学金は、減額された分を連帯保証人・保証人が請求される
- 自己破産で免責された奨学金は、免責された分を連帯保証人・保証人が請求される
ざっくり言うと『あなたの支払義務がなくなっても、保証人が残っている債務を支払わなければいけない』ということです。
連帯保証人は全額、保証人は2分の1の請求を受けます。一括で支払えなければ、保証人も債務整理が必要になるかもしれません。
保証人にできるだけ迷惑をかけないための対処法
奨学金を含めた債務整理をするなら、保証人への影響は避けられません。だからこそ、次のような対処が大切です。
手続きの前に、保証人へきちんと説明する
債務整理を始めると、JASSOから保証人へ連絡が行く可能性があります。何も知らされないまま突然請求が届くと、保証人は大きなショックを受け、トラブルになりかねません。手続きをする前に、事情を説明して相談しましょう。
保証人も含めて弁護士に相談する
保証人が請求を受けたときの対応(分割払いの相談、保証人自身の債務整理の要否など)は、専門的な判断が必要です。本人と保証人で一緒に弁護士へ相談するのが安心です。
奨学金以外だけを整理できないか検討する
先ほど紹介したとおり、奨学金以外の借金だけを任意整理すれば、保証人に連絡は行きません。まずはこの方法で解決できないかを検討しましょう。
個人再生・自己破産をした場合の返済は、手続き終了後に任意で
債務整理の手続きがすべて終了したあとに、保証人だった人へ任意に返済することは可能です。
- 自己破産の場合:免責許可が決定したあと
- 個人再生の場合:再生計画に基づく債権者への弁済が終了したあと
ただし、次の見出しで説明する偏頗弁済(へんぱべんさい)の問題があるため、手続き中に約束をするのは避けてください。
偏頗弁済の約束は避けるべき理由
偏頗弁済とは、破産や個人再生などの手続きの前後に、一部の債権者だけに優先して返済する行為です。債権者を公平に扱うという原則に反するため、禁止されています。
自己破産では、偏頗弁済があると免責が認められない可能性があります。
「債務整理が終わったら、あなたが奨学金実施団体に払ったお金を返します」という偏頗弁済の約束も、内容や時期によっては問題視されるおそれがあります。
手続きが終わったあとの任意の返済そのものは問題ありませんが、その線引きは専門的で、素人が判断するのは危険です。
当サイトとしては、無用のリスクを避けるためにも「偏頗弁済の約束はしない」ことをおすすめします。保証人への返済を考えている場合は、必ず弁護士に確認してから話を進めてください。
奨学金の保証は「機関保証」か「人的保証」
奨学金の申請者は学生本人です。学生自身が借主となり、本人が返せなかった場合に備えた保証制度として、「機関保証」か「人的保証」のどちらかを選びます。
【機関保証と人的保証の違い】
| 種類 | 保証制度 | 内容 |
|---|---|---|
| 機関保証 | 公益財団法人日本国際教育支援協会(JEES)が連帯保証 | ・一定の保証料の支払いが必要 ・奨学金から保証料が差し引かれる ・連帯保証人および保証人は不要 |
| 人的保証 | 連帯保証人・保証人の両方が必要 | ・連帯保証人:原則として「父母またはこれに代わる人」 ・保証人:原則として「おじ・おば・兄弟姉妹等」(本人・連帯保証人と別生計の4親等以内の親族) |
自分がどちらの保証制度を利用しているか分からない場合は、採用時の書類やスカラネット・パーソナル、JASSOへの問い合わせで確認できます。
機関保証なら親に迷惑はかからないが、債務はなくならない
機関保証を選択している人が個人再生や自己破産をしても、連帯保証人や保証人に請求が行くことはありません。機関保証を選んだ人の場合、通常は親族が保証人になっていることもありません。
ただし、次の点に注意が必要です。
- 延滞などで保証機関が代位弁済(本人に代わって支払うこと)をしても、本人が保証機関に返済しなければならない
- 代位弁済が行われると、個人信用情報機関に情報が登録される
つまり、機関保証は「家族に請求が行かない」だけで、「債務が消える」わけではありません。債務整理の手続きでは、保証機関が債権者として扱われます。
なお、これから子供が奨学金を利用する予定で、保証人になる予定の方がすでに債務整理をしている場合は、連帯保証人として認められない可能性があります。詳しくは奨学金の保証人が債務整理するとどうなる?をご確認ください。
JASSO以外の奨学金を借りている場合
奨学金には、JASSOのほかにも、地方自治体、大学独自の制度、民間の育英会、新聞奨学会などがあります。また、銀行や日本政策金融公庫などの教育ローンを利用している人もいます。
これらは制度ごとに保証の仕組みや、延滞時の対応が異なります。
- 誰が保証人になっているか(親族か、保証会社か)
- 延滞したときに一括請求されるのか
- 交渉に応じる余地があるのか
まずは契約書や返還のしおりを確認し、そのうえで弁護士に相談して個別に判断してもらいましょう。
奨学金の債務整理でよくある質問
Q. 奨学金を債務整理すると家族にバレますか?
人的保証で奨学金を債務整理の対象に含めると、連帯保証人・保証人に請求が行くため、家族に知られる可能性が非常に高いです。一方、奨学金を外して他の借金だけを任意整理する場合や、機関保証の場合は、奨学金を通じて家族に連絡が行くことはありません。
Q. 奨学金を延滞するとブラックリストに載りますか?
JASSOは、返還の延滞が3か月以上になった場合、個人信用情報機関に延滞情報を登録します(新たに返還を開始する人は、返還開始から6か月経過した時点で判定されます)。登録されると、クレジットカードや各種ローンの利用に影響が出る場合があります。
Q. 奨学金を滞納しているだけでも弁護士に相談できますか?
相談できます。滞納の段階から相談すれば、救済制度を使うべきか、奨学金以外の借金を整理すべきか、保証人への影響をどう抑えるかなどを、状況に合わせて整理してもらえます。無料相談を設けている法律事務所も多いので、まず利用してみましょう。
まとめ
この記事をまとめると、次のとおりです。
- 奨学金の保証は、機関保証か人的保証のどちらか
- 人的保証で奨学金を債務整理の対象にすると、連帯保証人(全額)・保証人(2分の1)に請求が行く
- 家族に迷惑をかけずにすむのは、「機関保証を利用している」か「奨学金以外の借金だけを任意整理する」場合
- 債務整理の前に、減額返還・返還期限猶予などの救済制度を確認する
- 機関保証でも、代位弁済後は本人が保証機関に返済する必要がある
両親や親せきが保証人になっている場合、内緒で奨学金を債務整理することはできません。場合によっては、保証人も一緒に債務整理することになります。
「親に迷惑をかけたくない・・・」と悩んでしまうかもしれませんが、誰にも言えずに悩んでいても状況は変わりません。まずは弁護士の無料相談を利用してください。
