任意整理を申し出ても、すべての貸金業者が希望どおりに応じてくれるわけではありません。ただし、任意整理そのものを全面的に拒否する貸金業者は少なく、実際には「条件付き」で応じるケースが多いのが実情です。
たとえば、「将来利息の一部は免除するが、ゼロにはしない」「利息のカットには応じるが、分割ではなく一括払いを求める」といった対応です。
貸金業者が任意整理に応じやすいのは、断って債務者に自己破産や個人再生をされるよりも、少しでも多く回収できるほうが得だからです。
一方で、次のようなケースでは、交渉が難航しやすくなります。
- 個人や、貸金業者以外からの借入
- 奨学金
- 借入期間が極端に短い、または延滞を繰り返している
- 会社の方針で、分割や利息のカットに応じない業者
この記事では、任意整理に応じてもらえないケースを整理したうえで、断られたときの対処法とよくある質問を解説します。
※業者ごとの対応は、時期や債務者の状況によって異なります。自分の借入先がどこまで応じてくれそうかは、債務整理を扱う弁護士・司法書士に相談すると確認できます。
債務者に自己破産されるよりは、任意整理に応じた方がよい
任意整理に応じると、貸金業者は当初の予定よりも回収できる額が少なくなってしまいます。
しかし、任意整理に応じずに債務者が自己破産してしまったら、債権者である貸金業者は貸したお金を全く回収できません。個人再生で債務が5分の1や10分の1になったとしても、大損を被ってしまいます。
それなら任意整理に応じて少しでも多く回収できた方が良いのです。
任意整理に応じてもらえない・難航しやすいケース
任意整理に応じてもらえない、または交渉が難航しやすい代表的なケースを、理由と対処の方向性とあわせて整理しました。
| ケース | 応じてもらえない・難航しやすい理由 | 対処の方向性 |
|---|---|---|
| 個人・友人・知人からの借入 | 貸金業者と違って債務整理に慣れた窓口がなく、話し合いに応じてもらえなかったり、感情的な対立になったりしやすい | 他の借入だけを任意整理の対象にして、個人への返済は条件を個別に相談する。進め方は弁護士・司法書士に確認する |
| ヤミ金などの違法な業者 | 任意整理の交渉相手として想定できない。違法な高金利や取立てそのものが問題になる | 任意整理では解決しないため、早めに弁護士・司法書士、警察、法テラスなどの公的な窓口に相談する |
| 奨学金 | 利息のカットや減額を前提とした交渉がしにくい。人的保証の場合は、延滞すると連帯保証人・保証人に請求が行く | 奨学金は対象から外し、他の借入を任意整理する。返還が苦しいときは、減額返還や返還期限猶予などの制度を確認する |
| 借入期間が極端に短い | 返済の実績が乏しく、債権者が慎重になる | 借入の経緯も含めて弁護士・司法書士に正直に伝え、進め方を相談する |
| 延滞を何度も繰り返している | 和解しても守られないのではという懸念から、条件が厳しくなりやすい | 現実に払える返済額で計画を立て、積立などで返済の見込みを示す |
| 会社の方針で条件を認めない業者 | 分割払いを認めず一括払いを求める、利息は一部しかカットしない、など会社ごとの方針がある | 条件を見直して再交渉する、またはその債権者だけ対象から外す(次の節を参照) |
| 依頼後に新たな借入・カード利用をした | 債権者との信頼を損ない、交渉に悪影響が出るほか、手続きを続けにくくなる | 依頼後は、新たな借入やクレジットカードの利用をしない |
奨学金の扱いについては、次の記事で詳しく解説しています。
関連:奨学金を債務整理する時の注意点は?保証人が誰なのかが重要です
なお、任意整理に「全く応じない」貸金業者はほとんどありません。多くの場合は、利息や分割の条件をめぐる調整になります。
任意整理を断られたときの対処法
債権者の1社に断られたからといって、債務整理がそこで行き止まりになるわけではありません。状況に応じて、次のような方法があります。
1.条件を見直して再交渉する
債権者が応じない理由の多くは「条件」にあります。弁護士・司法書士が、次のような形で条件を調整して再交渉することがあります。
- 経過利息や遅延損害金の一部を支払う代わりに、将来利息をカットしてもらう
- 分割回数や毎月の返済額を見直す
- 返済の見込みが伝わるよう、積立の実績などを示す
2.その債権者だけ対象から外して通常返済する
任意整理は、対象にする債権者を選べる手続きです。応じてくれない債権者がいる場合は、その債権者を対象から外して、これまで通り返済を続ける方法があります。
ただし、他の債権者の返済額が減っても、外した債権者への返済を続けられる収入があることが前提です。返済を続けられるかどうかを、事前によく確認しましょう。
3.個人再生や自己破産への切り替えを検討する
利息のカットだけでは、5年以内に元本を返済しきれない場合は、任意整理そのものが向いていない可能性があります。
- 元金だけなら3〜5年で完済できる ⇒ 任意整理
- 元金を減らさなければ完済できない ⇒ 個人再生
- 継続的な収入が見込めず、返済が難しい ⇒ 自己破産
関連:個人再生の特徴を解説します。住宅を手放さずに済む条件とは何でしょう?
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4.放置すると訴訟や差押えのリスクがある
和解がまとまらないまま返済を止めて放置するのが、最も危険です。
債権者から訴訟を起こされ、判決が出ると、給与や預金などを差し押さえられる(強制執行)おそれがあります。任意整理は、債権者に応じる義務のない話し合いなので、交渉が決裂すれば、こうした法的な手段に進む可能性が出てきます。
裁判所から書類が届いた場合は、無視せずに、すぐ依頼している弁護士・司法書士に相談してください。訴訟の中で、和解が成立する場合もあります。
5.債務整理の経験が豊富な専門家に相談する
債権者ごとの対応の傾向や、どこまで条件を引き出せるかは、専門家の経験によって差が出ることがあります。断られた経緯を伝えたうえで、債務整理の実績が豊富な弁護士・司法書士に相談してみましょう。
利息以外の免除には応じないことが多い
任意整理の目的は利息をカットすることです。元金が減額されるケースは非常に稀です。
元金を減額しなければ5年以内に返済できない状態なら、個人再生や自己破産を考えた方がよいでしょう。
分割回数は3年または5年以内とする業者が多いですが、分割返済には応じずに一括返済を主張する業者もいます。
任意整理に条件付きで応じる例
- 将来利息の一部免除には応じるが、利息ゼロには応じない
- 遅延損害金の免除には応じるが、分割払いには応じない(一括払いを主張する)
債務者の返済履歴によっては全く応じないこともある
債務者の返済履歴によって任意整理に応じない場合があります。借入期間が極端に短かったり、何度も延滞をしている債務者とは合意に至らないこともあります。
弁護士に任意整理を依頼すると『今からは絶対にお金を借りないでください。クレジットカードを使うのもだめです。』と言われますが、貸金業者が任意整理に応じなくなってしまうからです。
奨学金を任意整理すると連帯保証人に請求がいく
奨学金実施団体である日本学生支援機構(JASSO)は、任意整理の話し合いに応じません。
奨学金を借りる時には連帯保証人と保証人の両方をついていますが、弁護士から受任通知が送られた時点で、連帯保証人が奨学金を一括請求されてしまいます。
奨学金そのものを任意整理で減らすのではなく、連帯保証人のいないクレジットカードやカードローンを任意整理の対象にする方法が一般的です。
関連:奨学金を債務整理する時の注意点は?保証人が誰なのかが重要です
任意整理に応じない業者に関するよくある質問
Q. 任意整理に全く応じない貸金業者はありますか?
任意整理そのものを全面的に拒否する貸金業者は、ほとんどないといわれています。ただし、「利息は一部しかカットしない」「分割ではなく一括払いを求める」など、条件付きの対応になることは珍しくありません。
また、個人からの借入や奨学金など、貸金業者以外の借入は、交渉が難航しやすい傾向があります。
Q. 任意整理を断られたら、必ず訴訟になりますか?
必ず訴訟になるわけではありません。条件を見直して再交渉したり、その債権者だけ対象から外して通常返済を続けたりすることで、訴訟を避けられる場合も多くあります。
ただし、和解がまとまらないうえに返済も止めてしまうと、訴訟に発展するリスクが高くなります。断られた場合は、放置せず、すぐに専門家に相談しましょう。
Q. 利息を全額カットしてもらえない場合はどうなりますか?
任意整理の和解後も、将来利息がゼロにならないことがあります。たとえば、年15%だった利息が、和解後は年5%になるようなケースです。
利息が残っても、元の条件よりは返済総額が減ることが多いため、弁護士や司法書士への費用も含めて、依頼するメリットがあるかを比較して判断しましょう。
Q. 奨学金は任意整理できますか?
奨学金は、利息のカットなどを前提とした任意整理では、減額を期待しにくいのが一般的です。基本的には、奨学金を対象から外して、他の借入を任意整理する形になります。
注意したいのは、保証の種類によって影響が異なる点です。
- 人的保証:延滞すると、連帯保証人や保証人に請求が行きます(連帯保証人は全額、保証人は原則として半額が目安)
- 機関保証:延滞すると、保証機関が代わりに支払い、その後、保証機関から本人に一括で請求されます
返還が苦しい場合は、減額返還や返還期限猶予といった制度が利用できないか、先に確認してみましょう。
関連:奨学金を債務整理する時の注意点は?保証人が誰なのかが重要です
Q. 友人や家族など、個人から借りたお金も任意整理できますか?
手続き自体は可能ですが、貸金業者と違って、話し合いに応じてもらえないことも少なくありません。他の借入だけを任意整理の対象にして、個人への返済は別に条件を相談する方法もあります。
どう進めるかは、借入の経緯や関係性によって変わるため、専門家に相談しましょう。
Q. 借りてすぐでも任意整理できますか?
相談すること自体はできますが、借入期間が極端に短いと、債権者が応じにくくなることがあります。また、借入時に返済するつもりがなかったと判断される場合は、任意整理とは別の問題に発展するおそれもあります。
借入の経緯は、隠さずに専門家へ伝えましょう。
Q. 依頼した後にクレジットカードを使ってもいいですか?
使わないでください。任意整理の対象にしたカードは、利用できなくなるのが一般的です。対象外のカードや新たな借入も、債権者との信頼を損ない、交渉に悪影響が出るおそれがあります。
生活費の支払いに不安がある場合は、依頼先の弁護士・司法書士に相談してください。
まとめ
この記事をまとめると下記の通りです。
- 任意整理に全く応じない金融業者は少ない
- 奨学金だけは任意整理で減額できない
- 金融業者以外から借金をした場合、任意整理にまったく協力してくれないこともある
自分が利用した業者が任意整理に応じてくれるかどうかは、債務整理が得意な弁護士に聞いてみるのがよいでしょう。
